メイドのお仕事
「条件、って…?」
「簡単。利琥に別れてって言えばいいの」
「え、別れて?…私たち別に付き合ってるわけじゃ―――」
「いいから」
…何言ってるの?
「あんたはただ、利琥に別れてって言えばいいの。距離を置きたいとか、曖昧な事は言っちゃ駄目だからね」
きっぱり、別れたいと言えば……利琥は救われる。
「でも、私…利琥と別れるのは…」
私は、今のこの関係を崩したくないし、崩してほしくない。
「うるさいな、いいの?利琥が一人ぼっちになっても」
「……」
「それに、利琥は葉凪の事を裏切ったのよ?」
美優はもう一度、私に写真を見せてくる。
裏切った……。
「覚悟は決まった?」
私は利琥を呼ぶ為に教室へ向かっていた。
こんな事…本当はしたくないけど。
「利琥…!!」
私は利琥を呼び出した。
そして『別れて』を言い続けた。
写真の事も言われたけど、私は嘘を付いてはぐらかした。
やっぱり利琥は納得なんかしてくれなかった。
でも、言い続けた。
胸が苦しくて…泣きたくて…今すぐ、利琥の胸に飛び込んで抱き締めてほしかった。
今思えば、この時…既に利琥の事が好きだったのかもしれない。
だって、裏切られても…こんなに利琥のことを想ってる。