メイドのお仕事
「利琥?何かすっごい汗かいてるけど…」
「あ…、あぁ大丈夫だ」
実際全然大丈夫じゃない。
葉凪に、逢いたい。
「あ、潤!葉凪!」
その声に、俺はハッと顔を上げる。
俺たちと少し距離を置いて、そわそわしてる葉凪が目に入った。
…やっぱ、大好きだ。
「おう、利琥。体調はどうだ?」
「あぁ…やっぱ家の方が落ち着く」
「だろうな」
とりあえず話は合わせてるけど、全然頭に入ってない。
頭の中は、視界の隅に映る葉凪の事だけ。
「おーい、葉凪もこっちおいでよっ」
祐樹の声に、俺が反応。
「あ…うん」
葉凪が近付いてくるけど、俺と目を合わせようとしない。
…怒ってんのか?
「た、退院おめでと……う」
ありがとう。
…って言いたいのに言えない、情けない俺。
意地張ってどうすんだよ。
「あ、えと……」
葉凪は何か言おうとしてた。
だけどその前に、伝えたい事があるから。
「悪いけどお前ら、ちょっと外してくれるか?」
俺は葉凪の言葉を遮って、祐樹たちに声を掛けた。
「……分かった。おい、行くぞ」