メイドのお仕事

―――翌日。


「…お父さん」


私は、リビングでテレビを見ていたお父さんに声を掛ける。


「ん?」



お父さんは私を見ないで返事をする。

「…行ってくるね、私」


「どこにだ?」



分かってるくせに。


「お母さんの、お墓参り」

「……」


「ちゃんと、けじめ…つけてくる」

「……そうか」




玄関に向かうと、後ろから声がした。



「葉凪、これ持っていけ」


その言葉に振り返る。



お父さんが持っていたものは、ピンクの鈴と飾りが付いた、ストラップだった。



「何、これ?」

「俺と、母さんが付き合ってた頃に買った物だ」


「え…?」


「初めてデートした時…母さんに買ってやったんだ」



お父さんの顔は真っ赤で、泣きそうになっていた。


「…お父さん」



「悔しいんだよ、…母さんの事、守れなくて」

私も、泣きそうになった。





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