メイドのお仕事

私は大切にそれを受け取った。


「ごめんな、葉凪。…お前にも、辛い思いをさせた」



私は横に首を振る。

「そんな事ないよ、お父さん」




その日、私は初めてお父さんの涙を見た。




「行ってきますっ」

「行ってらっしゃい」


何だか胸につっかえていた物が取れた気分。





「祐樹!」

「あ、葉凪っ」


私たちは駅で待ち合わせをして、そこから電車でお墓のある街まで行く。



「行こっか」

「うん」





「え!?電車、乗った事ないの?」


ガタン、ゴトン…と、のどかな電車に揺られながら私は聞いた。


「記憶にないから…多分ない」

とんでもないお坊ちゃんだな…。





「もうすぐ着くよ…ってあれ」


祐樹、寝ちゃってるし。

てか寝顔可愛い…写メっておこう。




「祐樹、起きて」


さぁ、行こう。

けじめをつけに。


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