メイドのお仕事
教室を通り過ぎ、空き教室に入る。
廊下から聞こえる騒がしい声も、
ドアをピシャリと閉めると聞こえなくなる。
その空間だけ切り取られた感じがして、俺は安堵する。
ここにはだれも来ない。
俺、一人だけ。
「はぁ……」
三回目のため息をついた頃、チャイムが鳴り響いた。
昼休みの終了を知らせる鐘。
教室に戻る気は到底ないが。
あんな態度、取るつもりなかった。
葉凪のあんな顔、見たくなかった。
でも、潤に抱き締められて顔を真っ赤にしてる葉凪を見た瞬間、
俺の中の何かが弾けて。
気が付いたら酷い言葉を葉凪にぶつけていた。
「くそ…っ」
このままじゃ駄目だ、俺らしくない。
俺の好きなようにやらせてもらう。
我儘だって何だって構わない。
「葉凪」
俺は無意識に、愛しいその名を呟いていた。