君とみた未来
ホントに、行くつもりなのかな。


行くんだったら……。


行くんだったら、早く行って、早く終わらせて、デートよ!


足がすくんで、なかなか一歩が出せない。

恭平の背中を押して進ませようとした。

「こ、こら。押すな。樹理」


だって!


だって、なんか怖いんだもん。


恭平が気合を入れる。

「よしっ、樹理」

「え?」

「行くぞ」

「う、うん。わかった」

一歩踏み出そうとした時、カランカランと、玄関の扉が開き中から人が出て来た。

ドキッ。

心臓が一つ大きく響く。

「や、やぁだぁ恭平ったら、眼科と産婦人科間違えて来てどうするのよ。あ、お腹大きいですね……ほら恭平、眼科は向こうだよ」

頭真っ白。

あたしの声は上擦っている。

お腹の大きな女性は、あたしを見て微笑みながら歩いて行った。

心臓がバクバクしていた。

「どうしたんだよ」

恭平が聞いてきた。

「だって、恥ずかしかったんだもん」

「だからって何も『お腹大きいですね』なんて、話しかけなくてもいいだろ」


確かに……。


でも、あの人あたしのこと見たもん。

「やっぱり、やめるか」

恭平が、独り言のように言う。


できればそうしたいけど……。


でも……。


「だめだよ。行って来いって、言われたんでしょ?ホントに、悪い病気だったらどうすんのよ、行くよ」

実は、産婦人科の建物についてから、かれこれ三十分が過ぎようとしていた。

そしてあたしは、産婦人科の扉を恐る恐る開いた。

入ってすぐ、右側に下駄箱があった。

床は、明るいグレーのピータイルで普通の病院のように椅子が並べられていた。

「なんか、殺風景だね」

あたし達は、靴を脱いで、緑のスリッパに履き替えた。

「おばはんは?おばはん達いるのか?」

恭平は、小声であたしに何度もつぶやいた。

看護士さんらしき人が受付にも、待合室にも誰もいなかった。

「あのぉ、すみません」

あたしは、恭平と一緒に中を覗き込むように受付の窓口に立った。

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