君とみた未来
中から、中年のおばさんが出て来て、あたしと、恭平を一回ずつ見て「何か」と、聞いてきた。

恭平が「ビンゴ!」と小声で言った声を、あたしは聞き漏らさなかった。

「何かって……。恭平、言ってよ」

あたしは、恭平をこづいた。

「あぁあ、あのっ。検診に……」

恭平は、声を裏返しながら言った。

「ここに来たのは初めて?こちらの紙に記入して、また持って来て下さい」

受付のおばさんは、紙を二枚とボールペンをあたしに手渡した。

あたし達は、近くにあった椅子に腰掛けた。

「何だ、これ?」

恭平は、紙を覗き込んだ。

一枚は住所を書くもの。

もぅ一枚は、アンケート形式の問診表だった。

「恭平が検診に来たんだから、恭平が書いてよ」

あたしの心臓はまだドキドキしていた。

「おぉ。何々?氏名?・・樹理、お前の名前書いとくぞ」

「えー」

「いいだろ、後で先生に診てもらうときに訂正すれば」


もぉ、勝手なんだから。


恭平は気にすることなく、また用紙に目を向けた。

「本日はなんの相談で受診しますか、丸印をつけてください?えーと、妊娠。男がするわけねぇっての、違う。不妊・出血・月経の異常。痛み。うーん、たまに腹は痛いんだよなあ。痛みマル。おりもの・かゆみ・避妊。ちゃんとしてるよなぁ、」


バーカ。


「ガン検診、まさか癌なんてな、その他……その他だよなぁ。たまに、立ちくらみがするっと」

「恭平、それだけ?」

「だって、立ちくらみだけだろ?・・結婚していますか?余計なお世話だ。月経について記入してください。初めての月経は?おい、樹理何歳だった?」


なっ!


「何で、あたしなのよ!」

「男に月経があるわけないだろ」

「だから、恭平が検診受けるんだから、あたしは関係ないでしょ?」

「まぁ、そうだな……次、出産は何回しましたか……俺に関係ない質問ばかりだな。タバコを吸いますか。たまに。酒をよく飲みますか。飲む。……よっし、樹理置いてきてくれ」

恭平に渡された紙を、あたしはさっきの受付の所へ持って行った。

「少ししたら呼ぶから、ちょっと待っていてくれる?」

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