君とみた未来
病院からの帰り道に、本屋に寄ってもらう以外は、話しかけるタイミングも難しくて、ずっと黙ったままだった。

家に帰ってからも、あたし達はろくに口も聞かなかった。

「どうだったの?病院は」

母さんが聞いてきたけど、あいまいに口を濁してしまった。

とても妊娠してるなんて、あたしの口からは言えそうもなかった。

二階のあたしの部屋に閉じこもってしまった恭平の所へ行った。

「恭平?入る、よ……」

恭平は、窓を開け、空を眺めていた。

あたし達の心とは裏腹に夏の太陽が猛威を振るっていた。

「あの、さ。間違いだよ。妊娠してるわけないじゃん」

恭平は何も言わない。

「違う病院行こうよ」

「そこで、あなたは妊娠してます。って言われたら、どうすんだよ」

「言われるわけないでしょ。なんで恭平が妊娠すんのよ!恭平は男なんだよ。もし、もし妊娠するんだったら、あたしでしょ?恭平とあたしの、かわいい子供を二人で育てるんでしょ?恭平が妊娠するわけないじゃん!」

あたしは、泣きそうになりながら自分に言い聞かせていた。


そうだよ、大体なんで恭平が妊娠するの?


そこからおかしいよ。


ただの立ちくらみなんでしょ?


なんでそれが、妊娠になるの?


妊娠って、赤ちゃん産むのって、女の人の役目でしょ?


男の人は関係ない世界じゃん。


恭平には関係ない世界じゃん!


「あの医者、二ヶ月だって……真っ青になりながら言い切ったんだぞ」

恭平は、自分のお腹を見て話した。

あたしは、恭平の腕にしがみついて言った。

「信じないっ。絶対、信じない!ウソだよ……そんなことあるわけないでしょ。恭平が、赤ちゃん産めるわけないじゃない」

あたしは、恭平を優しく抱きしめていた。

恭平があたしの胸の中でボソっと言った。

「明日もぅ一度、産婦人科へ行く。もぅ一度ちゃんと話しを聞くぞ」

「……」

あたしはなんだか狐につままれた気分だった。

医者の言ってる意味もわかんないし、あの産婦人科での数時間の出来事がウソのように思えてきていた。


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