君とみた未来
次の日、あたし達は、また桜ヶ丘南産婦人科病院に来ていた。

開口一番、昨日と同じ先生、桜ヶ丘先生は、こう言った。

「間違いありません。妊娠しています」


間違いないんだ……。


「本当なんですね」

恭平は、念を押して聞いた。

「ええ。私もあの後、もう一度慎重に確認したのですが、やはり、間違いはないようです……それで……」

桜ヶ丘先生は、改まった口調で聞いてきた。

「……もし、産むとしたらどうなるんですか?」

「っっ!」

あたしは思わず恭平の顔を見た。

沈黙。

沈黙。

沈黙。

桜ヶ丘先生は、やっと我に返って。

「どうなる?……正気ですか?男性の方が子供を産むなんて。無事に産まれるかどうか、確信ももてませんし、男性の体と女性の体の仕組みが違うことくらいわかるでしょ、あなたなら」

と、一気にまくし立てて言い切った。

「子供を無事に取り出すことを職業としている医者が、簡単に中絶を勧めるんですか。あなたそれでも産婦人科医ですか?」

恭平も負けずにくってかかった。


恭平っ!


突然何を言い出すの?


どうしたの?


まさか、赤ちゃん産む気じゃないよね?


桜ヶ丘先生は顔を真っ赤にしながら怒鳴った。

「それはっ、女性だからです。あなたが産むと考えていることは、簡単な事ではないっ。女性でさえ大変なのに。いいですか?よく考えて下さい。今はまだ二ヶ月目だから、悪阻があるくらいですみますが、これからはお腹が出てくるんです。どうやってカバーしていくんですか。世間体だってあるでしょう。私は何も赤ちゃんを産んでもらいたくなくて言っているわけではないんです。そろそろ三ヶ月に入ろうとしています。これからの事を考えたうえで私は、中絶を勧めます」

「それでも、産みたいと言ったら?」

「及川さんっ、あなたは正気じゃない!」

「俺は、真面目ですよ。男が赤ちゃんを産んじゃいけないなんて法律はないはずです」

「それは、男性が赤ちゃんを産むなんてありえないからです!」

あたしは、二人のやり取りをただ黙って聞いていた。

圧倒されてもいた。

桜ヶ丘先生は、少し間をおくと、また話し始めた。

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