君とみた未来
『今日のイチオシの時間です。今日は、産婦人科特集です。最近、若い女性から年配の方まで、出産や育児などいろんな相談にのってくれて、産婦人科の駆け込み寺と評判になっているという産婦人科病院にスポットをあてました。その中で今回は、ニコニコ産婦人科病院で働いている、若月遥先生に密着取材をいたしました。ご覧下さい』


え~?


何これ~?


「恭平ー。こっち来てぇ」

あたしは、台所に立った恭平を呼び寄せた。

「なんだよ」

「今、テレビつけたら、産婦人科特集ってのやり始めてさぁ、産婦人科の駆け込み寺ってとこがあるみたいだよ」

「駆け込み寺?」

「うん。なんか、いろんな話しを聞いてくれるみたいだよ。ねぇ、ここの病院の建物って、あそこじゃない?近くにこういう建物あったよねぇ」

「白い建物なんてどこにだってあるだろ?大体病院はほとんど白いじゃないか。それにこんな所に取材が来るわけないだろ?……あれ?今、間宮食堂映んなかったか?あ、八尾寿司だ!すぐ近くじゃん!こんな近くに産婦人科あったんだな、へぇ~」

あたしも行ったことのある間宮食堂や八尾寿司が映って、二人とも妙にハイテンションになった。

二人でその特集に見入ってしまい、オカジロウ先生のことをすっかり忘れてしまった。

「樹理」

「なに?」

あたしは、恭平を見る。

恭平も、あたしを見る。

「……ここの病院に行かないといけないような気がする」

「うん」


あたしも、そう思うよ。


旅行先が決まんないのも、特集に目が釘付けになってしまうことも、あたしも恭平も、やっぱりお腹のことが気にかかってるからだよね。

「……行ったら、結果教えてね」

あたしは、微笑みながら言う。

「今回は無理に頼まないよ。行きたくないなら行かなくていい」

恭平は、真面目な顔して言った。

「冗談だよ。行くよ」

あたし達は、ニコニコ産婦人科に電話をして、なるべく患者さんがいない時間に若月先生に会って話しを聞いてもらえないかと、半ば強引に約束をとりつけた。

そして、二日後に若月先生の休憩時間を利用して、会ってもらえることになった。

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