君とみた未来
あたしの彼氏(妊娠一ヶ月)
六月。

梅雨、今日も雨。


ただ今、五時限目の理科の授業が終わり、掃除当番が居残って実験器具の後片づけをしていた。
もちろん
、あたしも掃除当番なわけで。


外は、たたきつける矢のような雨と、雷が入り交り、時折、落ちたんじゃないかと思うくらいの、雷鳴が、とどろいていた。

教室内は、蒸し暑く、そんな中、あたしはフラスコを洗いながら、担任の先生、彼氏でもある、及川恭平に念を押しながら聞いていた。

「ねぇ。ホントにホントに夏休みどっか遊びに行けるの?ゴールデンウィークの時みたいに突然行けなくなったなんて言わない?」

以前に一泊で伊豆に旅行を予定していたら、突然前日にキャンセルしてきた前科があるからちょっと不安。

「大丈夫だって。あの時は、ゴールデンウィーク研修があるってことすっかり忘れてただけだから、よく気づいたよな」


まぁったく、どっかぬけてんだよねぇ。


よく、気がついたじゃないっての!


ショックで一晩泣いたんだからね!!


恭平はそんなあたしの気持ちに気づきもしないで。

「あ、フラスコ割んなよ、最近生徒達が備品割りまくってるから数少ないんだ」

と言った。


あたしより、フラスコの方が大事なのね!


「ねぇ」

恭平に話しかける。

「……」

恭平は黙ったままだった。

「ねぇってば」

「あん?」

恭平は薬品を片付けながら答えた。

「返事くらいしてよね」

「……なんだよ」

「すき?」

あたしは、意地悪そうに、質問してみる。

「こ、こら。学校でそんなこと聞くんじゃない。誰かに聞かれたらまずいだろ」

恭平は、少し声のトーンを落とし、顔を赤らめながら答える。


カワイ☆


「誰もいないじゃん」

一緒の掃除当番の祐子と美加ちゃんは、この雷雨の中、まだゴミ捨てから戻って来てなかった。

祐子が、気をきかして、ゴミ捨てに行ってくれたのだ。

あたしは、周りを見回して言った。


なんか、言ってくんないと余計言わせたくなる。


「キョウヘイィ。すき?きらい?どっち??」

あたしは、器具洗いを中断して、恭平に歩み寄り、上目遣いに恭平を見つめた。



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