君とみた未来
「その相手は、樹理ちゃんじゃないの?」

あたしは、自分の膝を見つめながら黙って頭を左右に振った。

「……分かんない……違う、と思う」

「……」

「あたし、恭平から、ちゃんとプロポーズされてないから……もしかしたら、赤ちゃん中絶して、違う女の人の所へ言っちゃうのかなぁとか、恭平の赤ちゃんホントにあたしの子なのかなぁって……。きっとあたし、恭平に似合わない女だから、だから、赤ちゃんもあたしには授からないし、恭平にも嫌われちゃったのかなぁ。って……考えてたら、どうすればいいのか分かんなくなってきちゃって、若月先生に聞いてもらいたかったの、若月先生聞いてない?恭平から、そういう女の人のこととか、中絶の話とか。あたしのこと、嫌ってなかった?恭平」

「樹理ちゃん、そんなに悩んでいたんだね。そんなに思いつめるほど、及川さんのこと助けてあげていたんだね……実はね、今から及川さんが来ることになっているんだ」

あたしは、泣き顔のまま若月先生を見た。

「なんで?今日診察の日?」

「いいえ。及川さんの方から連絡があったんです。及川さんには、何かあったら必ず連絡するようにと約束してありますしね」


じゃあ、あたしに内緒でいろんな話しをしてるかも知れない……。


「樹理ちゃん、その結婚の話しは私だって知らないことだよ」

あたしの考えを見透かすように若月先生が言った。

突然ドアがガチャっと開いた。

「失礼しまーす。あれ?樹理来てたのか?よく分かったなこっちに寄ること」

恭平が看護士さんに案内されて突然部屋に入って来た。

あたしは慌てて涙をぬぐって、泣き顔を恭平に見られないように横を向いた。

「思っていたより、早く着きましたね」

若月先生は、恭平に椅子を差し出し、さりげなくあたしにハンカチを渡してくれた。

そして若月先生は、恭平の方へ体を向けると話しを切り出した。

「えーとですね。今日はまず及川さんの話しと私の診察の前に、今の事を考えなければいけないようなので、ちょっとお二人に時間を差し上げますので、よく話し合っていただきたいのですが」

恭平は、あたしの顔を見て。

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