君とみた未来
「今のお前は見たくない……出てってくれ」


なっ。


なにぃ~。


で。


出てけって……。


今、そぅ、言ったの?


どうして?


あーいう所でバイトしてたのが、そんなに気に入らないの?


所詮、バイトなのよ?


職業にしてるわけじゃないのよ?


出てけって、あたし、どこに行けばいいのよ。


「お前が出て行かないんなら、俺が出て行く」

恭平が立ち上がった。

「……いいよ。あたしが出てく。……こんな寒空に出歩いて、流産して、あたしのせいにされたくないし……。あたし、あたし、間違った事した覚えないからねっ。恭平に誤る気なんてないからね!」

フンッ。

「……」

「……恭平のバカッ!」

あたしは、ドアを力いっぱい閉めて、恭平のアパートを飛び出した。


どこ行こう……。


お金も、あんまり持って来てないし。


コートのポケットからお金を取り出す。


二百五十円か……。


今のあたしの全財産……。


笑えるわ……。


だいたい、こんな寒空に、出てけなんてっ。


今、何月だと思ってんのよ。


追いかけても来ないし。


寝れる所探さないと、死んじゃうわ。


情けない、出てくる時、ちゃんとお財布持ってくればよかった。


何も、飛び出すことはなかったのよ、どぅせ、出て行くんだったら……。


とりあえず、コンビニで百円玉を十円玉に両替してもらった。

そして、公衆電話から、祐子の家の電話番号をプッシュした。

コール十回。


だめだ、祐子どっか行ってんだ。


どぅしよう。


ずっと、ここにいるわけにもいかないし。


ハァ~。

あたしは、ひとつため息をついた。

公衆電話から離れて、フラフラと夜の道をさまよった。

いつの間に足が向いたのか、あたしは、自分の家の前にいた。


あたし、何やってんだろ……。


……母さん。


帰ったって、入れてもらえるわけじゃないのに……。


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