君とみた未来
「……恭平のとこに、戻るよ……」

あたしは、恭平のあの怒鳴った顔を思い出しながら言った。

「……ここにいなさい」


えっ?


「もぅ、どこにも行かなくていいから。お前の家はここなんだから、ここにいなさい」

「母さん」

あたしは、母さんをしっかり見つめた。

あんなに生き生きしていた母さんは、今は、妙にやつれて少し生気が抜けているように思えた。


心配してくれてたんだね……。


そう、させたのは、あたしなんだね……。


ホントにごめんね。


「さ、今日はもぅ寝なさい。話しなら、明日だってできるだろ」

「うん、ありがとう。おやすみ」

「おやすみ」

そう言って、母さんは自分の部屋へ入って行った。

あたしも、自分の部屋へ入った。

家を出た状態から全然位置が変わってない。

ほこりっぽくもなってない、母さんが、部屋の掃除をしていてくれたんだ。

ベッドにゴロリと横になって、あたしは、恭平のことを考えていた。


初めて見たな、恭平のあんな顔。


まだ、怒ってるのかなぁ、でも、あたしだって、恭平のためにバイトしたんだから、少しくらい気持ち分かってくれてもいいと思う。


ご飯、ちゃんと食べてるかなぁ。


一人で、洗濯とかしてんのかなぁ。


恭平のバカ。


心配させないでよ……。


そしてあたしは、いつの間にか眠りに落ちていった。


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