君とみた未来
夢を見ていた。

そこは、真っ青な空と。

新緑の大草原で。

疾風の風がときおり吹いて。

草が波のようにユラユラ揺らめいて。

恭平がいて、あたしがいて。

恭平は妊娠してなくて、昔のかっこいい男に戻ってて、たわいもない話ししてて……。

二人で、ケラケラ笑ってて……。

「恭平さん連れてきたわよ」

声がして、振り向くと母さんがこっちに向かって歩いていた。


ヤバイッ。


母さんと恭平の衝突を避けたい。

あたしは、ハラハラしながら、恭平をどこかへ追いやろうとしていた。

突然背中を押されバランスを崩し、前のめりにコケテ膝を打った恭平は、さすりながら言った。

「何だよ樹理、どうしたんだよ。ほら、お母さんが来るぞ」


何のんきなことを言ってんのよ、だから隠れてほしいんじゃないの、この鈍感!


「何二人でふざけてるの、あんた達はホントに成長しないわねぇ。笑われるわよ、この子達に」

母さんはもぅ目の前まで来ていた。


この子達?


よく見ると、母さんは、両腕にピンク色と水色のゴムマリみたいな物を抱えていた。

で、そのゴムマリをよぉっく見ると、赤ん坊だった。


ど、どこの子?


家じゃ、親戚入れても、あたしが一番年下のはずだし。


「二人抱えるのは、やっぱり重いわ。恭平さん一人もって」

母さんが、恭平に左腕に抱えていた子を渡す。

恭平はヨシヨシって、赤ん坊をあやしている。

さらに、母さんと、恭平はにこにこ笑っている。

「ねぇ、その赤ちゃん、どこの子なの?」

あたしは、思い切って二人に聞いた。

「あんた達の子に決まってるでしょ」

「俺達の子供だろーが」

二人一緒にハモられてしまった。

いやいや、そんなことじゃなくて。


あたし達の……子……?


じゃ、恭平の今のお腹は、赤ちゃんが産まれたから、すっきりしてるわけ?


「な、名前、なんて言うの?」

声をかすれさせてあたしは、恭平に聞いた。

「ん?女の子がヒナ。男の子がダイリ。お前のお母さんが付けてくれたんじゃないか、どうしたんだよ」


母さんが……。


名前を?


< 59 / 94 >

この作品をシェア

pagetop