君とみた未来
「あ、あたしにも抱かせて、あたしも抱きたいっ」

あたしは、恭平にお願いした。

「どうしたんだい、突然。いっつも抱いてるだろ?ほら、母さんの子を抱いてやりな、日増しに重くなってるよ」

そぅ言いながら、母さんは、あたしにピンク色の洋服を着させた赤ちゃんを抱かせてくれた。


やわらかい……。


「ヒナ……」


この子が、恭平とあたしの赤ちゃん……。


ほっぺたプヨプヨ。

自然に笑みがこぼれる。

「忘れないで、あたしのこと、ヒナもダイリも、あたしのこと、ちゃんと覚えていて」

「どぅしたんだよ、突然」

 恭平が不思議そうにあたしを見つめる。

「ううん、何でもない」

「写真でも撮ろうか」

母さんがカメラを手にしながら言った。

「ほら、もっと赤ちゃん見せて。あーあ樹理はホントに赤ちゃん抱くの下手だねぇ、いいかい?撮るよ、ヒィ、フゥ、ミィのハイッ」

カシャッ。



「樹理ぃ。そろそろ起きといでぇ」

パチッ。

あたしの目が開く。


ここ、どこ?


あ、自分の部屋だ……。


戻って来てたんだっけ。


あたしは、部屋から出て台所へ走って行くと、母さんに聞いた。

「母さん、ヒナとダイリは?」

母さんは、キョトンとして。

「何、それ、和菓子?」

と、聞き返した。

「……ごめん。何でもない、やっぱり夢か」

「ふーん、お雛様の夢でもみたのかい?」


そーか。


ヒナとダイリってお雛様とお内裏様のことだ。


でも、まさか子供の夢とは言えなくて、あたしは話題をそらす。

「ねぇ母さんって、写真写す時の掛け声って、ハイ、チーズ?」

「チーズ?そりゃ、食べもんだよ。ヒィ、フゥ、ミィのハイッ。だろ?」

「……ふーん」


変なの。


「そんなことより、今日は家にいるんだろ?」


どうしよう、恭平のとこ行ってみようか。


でも、母さんには言えないし……。



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