君とみた未来
「母さん、しばらく、夕方出勤のシフトになってるから、夕飯作っておくれよ。家の鍵持ってるかい?それと、母さん今からちょっと出かけるから、後よろしくね」

「こんなに早く?」

「早くって、もぅ、十一時すぎてるよ。あんた今起きたばっかりだろうけど、御天等さんは、とっくの昔に昇ってるんだよ」


失礼しました。


じゃ、行って来るって行っちゃったけど、何にもすることないんだよね。


朝御飯は、ご飯とお味噌汁、鰤の塩焼きかぁ。


あ、ちゃんと大根下ろしてある(ポン酢で食べると美味しいよ)なんか、すっごく久しぶりに食べるなぁ。


なめこと雑魚の下ろしあえもある、幸せ感じちゃうね。


そういえばあたし、恭平と一緒に暮してた時、こういうの作ってあげたことあったっけ。


朝は、パンとミルク。または紅茶。昼は、買ってきた弁当か、買ってきた菓子パン。


夜は、ちゃんとご飯作ってたけど、あんまり栄養とか、考えなかったよーな気がする。


恭平が、刺身食べたいって言っても、お金ないからダメって、モヤシ炒め(塩コショウたっぷり)ですませちゃったり。


白身の魚食べたいって言っても、どれを買えばいいのか分かんなくて、イライラしてきちゃって、結局カレーライスですませた日もあった。


美味しそうな卵料理テレビでやってたから、恭平に食べさせようと思った日だって、レンジに卵入れたら爆発しちゃって、インスタント焼きそばになった時もあった。


あたし、恭平の奥さん失格だ。


なんか、よく文句も言わずに食べてくれてたなぁ。


これからは、気をつけよう。


やっぱり、気になるなぁ。


ちょっとだけ、様子うかがおっかな。


あたしは、母さんが、夕飯を作るようにって置いていったお金を握り締めて、家を飛び出した。

途中で八百屋に寄って、大根を買う。隣の魚屋にも寄って、鱈の切り身と、イカを買った。


あたしが、母さんみたいな料理を作ったら、恭平驚くかな、喜んで食べてくれるかな。


そして、ふと、我に返る。


まだ、怒ってるのかな……。


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