君とみた未来
玄関のドアに手を伸ばし、エイッと、力任せにドアを開く。

玄関の鍵は閉まっていなかった。

恭平がいるってことだ。

あたしは、そぉーっと家に入る。

「きょーへい?いる?」

あたしは、小声で、声をかける。

2LDKの部屋をぐるっと見回すと、恭平がどこかへ出かけていることが分かった。

「もぅ、無用心なんだからっ。ドロボーでも来たらどぅすんのよ、鍵もかけないで」

文句を言いながらも、早速エプロンをし、手は包丁を握り、料理の仕度に取り掛かっていた。

トントントン、と。

包丁がリズミカルに動く。

何か、普段作る料理より楽しく出来る。


とりあえず、部屋の片付けもして帰るか。


一通り、料理が作り終えると、部屋を見回してそう思った。


あたしいなかったの、一晩だよねぇ、見事に散らかしてくれたなぁ。


ん?


あたしは、テーブルの上で目が止まった。


これ、カップラーメンっ。


あたしが、お腹空いたら食べよーと思って買っておいた背油とんこつチャーシューラーメン!


何で、こんな栄養のへだたる物を……。


まったくもぉ。


あたしは、カップラーメンの空をゴミ箱に投げ捨てた。

部屋の掃除も終わって、テーブルに、ご飯の用意をしてあげて、家を出た。


明日も、また来るからね。


「ねぇ、母さん。あたしに料理教えて」

夕飯の片付けをしながら、あたしは母さんに言った。

「ちゃんと、作れてるじゃないか」

「そうじゃなくて、体にいい食べ物の料理」

「なんだい、体にいい食べ物って。母さんが知りたいよ、そんな食べ物があったら。料理なんてのは、アイデアだからね、自分で考えるんだよ」

「分かんないから、教えてほしいのにぃ」

「あんたが持ってる雑誌とかに、たくさん書いてあるだろ?料理なんて、それ見て作ってごらんよ」

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