君とみた未来
「今日は、遊んでたのかい?ずいぶん、遅かったじゃないか。夕飯適当に作ってるけど食べるかい?」

「うん、出来たら呼んで。あたし、部屋にいるから」

あたしは、そのまま部屋に入った。


バイトっていってもなぁ。


「今のコンビニだって、週一で、五時間だもんね」

雑誌をパラパラと見て、パサッとその辺にほおり投げた。

「あーあ、やっぱりオミズの方が、金回りがいいや。でも、もぉ出来ないし、短時間で高収入って所、どっかないかなぁ」

あたしは、ベッドでゴロゴロしていた。

ふいに、若月先生のことを思い出した。

「電話、電話。あの先生だったら、恭平のこと何か知ってるかも」

あたしの頭の中は、結局恭平のことでいっぱいだった。

電話をしても「若月先生は本日はお休みでいらっしゃいません」と、無愛想に言われてしまった。


やっぱり、恭平の家で待ってようかな。


「樹理、ご飯できたよ」

母さんが、顔をのぞかせて言った。

「ごめん。ちょっと出てくる。大事なようなんだ」

あたしは、鞄をひったくると、母さんの脇を通りぬけて出て行こうとした。

「何のために戻って来たんだいっ!」

突然母さんが怒鳴った。

「な……に、言って……」

あたしは、全身が固まった。

「あの人んとこ行くつもりなんだろ?」


バレてる……。


「あんたは、ホントにバカだねぇ。泣きながら帰ってきたんだろ?母さん、落ち着いてからでいいと思って、あえて何にも聞かなかったけど、まだ未練があるのかいっ」

あたしの心臓がドキドキしていた。

「でも、恭平にはあたしが必要なの。あたしも、恭平にいてほしいって思ったの」

母さんは、すかさずあたしの頬をたたいた。

「まだ言うか、この口はっ!」

そしてまた母さんは、あたしをたたいた。

何回も、何回も。

「何が気に入らないの?恭平のどこが気に入らないの?母さん、恭平とあんなに仲良かったじゃないっ。赤ちゃん出来たのがそんなに嫌なの?」

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