君とみた未来
あたしは、たたかれながら、反論していた。

「あんたは、まだ高校生なんだよっ。経済力もなくてどうやって生活していくんだいっ。それにねぇ、そのうちどっかから、絶対バレるんだよ、男が赤ん坊産んだってね。世間てのは、そんなにあまいとこじゃないんだよ、たかが十何年生きてるだけのお前に一体何が出来るんだいっ、何も分かってないくせに、一人で粋がって生きてんじゃないよっ」


クヤシイッ。


言い返せないっ。


トゥルルルルル。

トゥルルルルル。

唇をかんでるあたしに、電話の音が耳に入った。

母さんは、出ようとしなかった。

「はい、服部です」

あたしは、低い声で出た。

「私、若月と申しますけど……もしかして、樹理ちゃんか……な?」


若月先生っ!


「樹理ですっ。どうしたんですか?恭平に何かあったんですか?」

あたしは、受話器を握りしめた。

「おいおい、樹理ちゃんが病院に電話してきたんだろ?さっき、病院から連絡が入ってね、及川さんの家に電話しても、出る様子がないから、服部さんのお宅に電話してみたんだよ」

「あ、あの、今時間ありますか?」

「うん別に、今ならかまわないけど」

「じゃ、《ティー》っていう喫茶店知ってますか?そこに来てもらってもいいですか?」

「《ティー》ね、分かった」

《ティー》は、あたしの家から自転車で二十分くらいの所にある、こじんまりとした紅茶専門の喫茶店だった。

「誰からの電話だい?」

母さんが聞いた。

「……若月先生。これから会う約束したの」

ホントは内緒で行きたかったけど、これ以上ウソはつきたくなかった。

「母さんも、一緒に行くよ」


え?


なんで?


「あの先生には、もぅ一度ちゃんと会っときたかったんだよ」


会って、どうするつもり?


話しをして、それでやっぱり気味が悪いって、恭平のことバカにするの?


「……来たければ、くれば?」

本意ではなかった。

でも、どぅすることも出来なかった。

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