君とみた未来
「服部さんも、樹理ちゃんがせっかく話があるって言ってくれてるのに、そんなんじゃ、話しなんて出来なくなりますよ」

若月先生が、母さんをたしなめる。

「……悪かったね……」

母さんも、素直に謝る。

「おまたせいたしました」

注文した紅茶が、テーブルに置かれた。

あたしはウェートレスの人が去るのを待ってから話しを切り出した。

「若月先生、恭平は今どこにいるんですか?先生なら知ってるんでしょ?」

とりあえず、一番知りたいことを聞いた。

「知ってるよ」

若月先生は、簡単に答えてくれた。

「会いたいの、教えて!」

母さんは、紅茶をすすっていた。

「及川さんは、まだ会いたくないと言っていたけど」


えっ?


「なんで?」

「何でって言われても、本人の意思だし、そう言ってることですし」

「あたしのこと、やっぱり嫌いになっちゃったのかな……」

「それはないよ」

「何でわかるんですか?」

「ん?だって、そんな話しは一言も出なかったよ。それに、ニコニコしながら樹理ちゃんの手料理の話ししてくれたよ」


げっ。


「おや、手料理って何のことだい?」

母さんが話しに入ってきた。


マズイ。


恭平の家に通ってたのがバレちゃう。


「なんでもないの」

あたしが、誤魔化そうとする。

「樹理ちゃん、いつまでそうやって逃げるつもりだい?」

若月先生の顔はマジだった。

「逃げるって、そんなつもりはないけど」

「逃げてるじゃないか」

母さんも、あたしに言った。

「母さんに、ほとんど恭平さんの話ししないだろ?出てったら、それっきりで近況報告もナシで。好きだの離れたくないだの言ってるくせに、肝心な話しは、母さんにぜんぜん教えてないじゃないか」

「だって」

「だってじゃないっ!」

母さんが怒鳴る。

「母さん、恭平のこと変人扱いしてるじゃないっ。そんな人に恭平のこと分かってもらおうなんて思ってないもんっ」

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