君とみた未来
「どこか悪いの?赤ちゃん?」

あたしは、先生の腕をとる。

「今日、朝からずっと検査してたんだよ。だから私は急用以外いないことになっていたんだ、及川さんは元気だよ。検査結果はもう少し待たないと分からないかもしれない、慎重にデータを録ってるよ」

と先生は言ったけど、恭平に会うまで、この不安を取り除くことは出来ないと思った。

薄暗い廊下をひたすら歩いて、ある一室で立ち止まる。

生唾を飲んで、ここ?若月先生に聞く。

「開けてごらん。僕は、部屋の外で待ってるから」

「なんか、怖い……」

「何言ってるんだい、及川さんに会いたいって言ったのは樹理ちゃんだよ」


分かってる、でも、なんか……。


扉を開いて、若月先生はあたしを促した。

ゆっくりあたしは部屋に入り、そっと扉を閉めた。


この部屋、個室なんだ。


最初に入って思ったのが、この言葉だった。

テレビも、ソファーも置いてあった。

「恭平?」

あたしは、ベッドの所まで進んで行った。


寝てるのかな。


「恭平、起きてる?」

もう一度呼んでみた。

返事はなかった。


どうすればいいんだろ……。


若月先生の所に戻ろっかな、起こすの可哀想だし。


あたしは、健やかに寝ている恭平の顔を見つめて、静かに部屋を出ようとした。

「顔見てくだけかよ」

声がした。

ドキッとして、振り返る。

「話してかないのかよ」

また声がした。

「起きてたの?」

あたしは、恭平の所に駆け寄った。

「意地悪」

あたしは、恭平をたたくまねをした。

恭平は、ヨッコラショッと言いながら、起きた。

「無理しなくていいよ、辛いでしょ?」

「これくらい平気だって。若月先生は?」

「ドアの外で待ってる」

「入ってもらえよ。内緒話しするわけでもないんだから」

恭平に言われて、あたしは若月先生を部屋に入れた。

「今朝より顔色はだいぶいいですね」

「そっすか?ま、一日寝かせてもらいましたからね」

「恭平、いつから具合悪くなったの?」

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