君とみた未来
「君のお母さん、服部さんには、私のほうから全て話を通してあります」

????

「樹理ちゃんが、家を出てからの二人の生活や、及川さんの体について、もちろん赤ちゃんの発育記録も一緒に話してあります」

…………。

「母さんは、知ってたの?」

「はい。私から服部さんに、週一のペースでレポートしていました。及川さんから、お母さんが全く取り合ってくれないって話しも聞いていましたし」

「あたしと、恭平が喧嘩した理由も?」

「本当は、言わなくてもいいことなのかも知れないけど、あえて、言わせてもらうことにするよ」

「はい……」

「そこは、言ってませんが、あの日は、服部さんが直接私の所へ会いに来てくれました。喧嘩をしてすぐ、及川さんが私の所へ喧嘩をしたことを電話で話してくれて、樹理ちゃんがどこに行ってしまったのか分からなかったので、服部さんになんて言おうか考えてたら病院に来てくれたんです。自ら」


あの日だ。


母さん、今から行くとこあるから、家にいるんだったら、ご飯でも作れって言った日。


まさか、母さんがこの病院に来てたなんて。


「『あの子が家に戻って来ました。本当は、家に入れるつもりはなかったんですけど、ダメですね、母親は。寒空の中に一人、外に置いとくことが出来なくなったんですよ。玄関にあの子がいないことに気づいて、慌てて家を飛び出して、あの子を探しに行ったんです。でね、先生。あの子ったら、あたしとあんなに言い合って家を飛び出したくせに、あたしに泣きついてきたんですよ、思わずあたしまで抱きしめ返しちゃいましたよ』って、私に話してくれたんです」


母さんってば。


「そして、少し服部さんと話しをして、帰って行ったんですけどね。樹理ちゃん」

「はい?」

「君のお母さんは、すばらしい人だよ」

「はい」

さっき、やっと止まった涙がまたあふれてきそうだった。

「先生?母さんと話しをしたって、何の話し?」

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