君とみた未来
「わかりました」

「じゃ、樹理ちゃん行こう」

と促されて、あたしは若月先生と一緒に部屋を出た。

また車に乗って、あたしの家に向かった。

「お昼過ぎてるのか、お母さん何時くらいに仕事終わるの?」

「三時半にはだいたい帰って来てたと思うけど」

「三時半ね。樹理ちゃん、及川さんだけどね、もしかしたら陣痛かもしれない。普通はおしるしとか、おりものが増えるとか、あるんだけどなにぶん男性だからね、そこら辺が難しいですよ。荷物をまとめて病院に戻ったらすぐ及川さんの処置に入りたいので、すばやく荷造り済ませますよ」

「はい。……若月先生、陣痛って、赤ちゃんもう産まれちゃうの?予定日、十日だよ」

「十日ってのは、あくまでも予定日ですから、早かったり、過ぎたりという人はいますよ。さ、家に着いた。とりあえず、必要最低限の物だけ持って行きましょう。樹理ちゃんが帰ってこないって、泣いて待ってるかもしれないよ」

「もぉ、若月先生意地悪」

「ウソじゃないよ、喧嘩して私の所に来た及川さんは、実にひ弱な男性に見えたよ」


ホントかなぁ。


あたし達は、恭平の必要最低限の荷物をバックに詰め込んだ。

赤ちゃんの足りないものは、母さんが来てから用意することにした。

車に乗って、また若月先生が話し始めた。

「でも、よくここまで何事もなく無事に育てましたね」

「恭平が、頑張ったから」

「そんなことないよ」

「変な言い方だけど……まともな赤ちゃん、産まれてくるのかなぁ……」

「どうでしょうね。女の人だって、奇形児で産まれてしまうケースはありますからね。それだけは、産まれてこないと分からないですね」

「……帝王切開するんでしょ?」

「ま、その答えが一番妥当な答え方かな」

「恭平、死なないよね」

「大丈夫。心配しなくていいよ。生きる意志を持ってる人は簡単に死なないよ」

「なんか、若月先生には助けてもらってばっかりいる」

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