君とみた未来
ガチャ。

ドアが開いて、母さんが入って来た。

「母さん、どうしたの?随分早かったね」

「今日は終わる時間が早かったんだよ。家に帰ったら誰もいないし、置き手紙があるし、慌てて車で駆けつけたんだよ」

「ご心配おかけしまして」

恭平が頭を下げる。

「随分いい部屋に泊まってるんだねぇ」

母さんは、部屋をグルッと一回り拝見する。

「へぇ、トイレまでついてんのかい」


何に関心してんだか。


「っっっ」

「恭平?また痛いの?」

あたしは急いでナースコールを押した。

あまりの痛さに、声が出せないでいる恭平を見て、やっぱり陣痛なのかも知れないと思ってしまった。

母さんは、恭平のお腹や背中をさすっていた。

数分後、若月先生と数人の看護士さんが部屋に入って来た。

「分別室に移動しますね」


とうとう赤ちゃんが産まれるんだ。


恭平は苦しそうに、唇を噛んでる。

「若月先生、あたし、立ち会いたい」

あたしは、若月先生にお願いした。

「だ……めだ。俺、一人で、がんば……るから……お前、学校……い……け」

恭平は、息をハァハァ言わせながら言った。


こんな時に、学校なんて行けるわけないでしょ!


「私も立ち会いは、しない方がいいと思いますよ」

若月先生も同意する。

「そんなに、気持ち悪いものなの?」

「ん~。すぐに、赤ちゃんを取り出すわけではないですからねぇ。検査して、及川さんにとって負担のかからない方法を探して、赤ちゃんにも負担をかからないようにしないといけませんしね」


大変ってことだね。


「分かった。待ってる。若月先生に全てまかせる」

そして、恭平は部屋を出て行った。

待つこと数時間、何の連絡もなかった。

その間に、母さんに頼んで、熱が四十度でて、とても学校には行けそうにないと、連絡を入れさせた。

「母さんちょっと買い物に行ってくるよ」

椅子から立ち上がって母さんが言う。

「なんの?」

「赤ちゃんの着る服だとか、用意してないんだろ?」

「そうだった」


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