君とみた未来
PM十一時。

あたしは、部屋の中をグルグル歩き回っていた。

母さんは、相変わらず高イビキで寝ている。


AM零時。(三月三日)

あたしにも、疲れが押し寄せてきた。

母さんは、一向に目を覚ます気配はなかった。


 AM零時三十分。
 
う~、母さんみたいに寝れたら、どんなに気持ちいいだろう。


でも、恭平が頑張ってるのに、あたしが寝るなんてそんなこと出来ないよ。


あたしの睡魔も吸い取ってよ母さん。


缶コーヒー五本空けたのに、眠くなる時は、やっぱり眠くなるんだよね。


ガチャッ。

部屋のドアが開いた。

さっきの看護士さんが、また顔を覘かせた。

「起きてたの?」

「なんだか、眠れなくて……」

「手術終わったから、もぅ戻ってくるよ」

「ホントですか?」


よかったぁ……。


「後で、また来るからね」

看護士さんは行ってしまった。


やっと終わった。


もうすぐ、恭平が戻って来る。


「母さん、母さん!起きて!恭平が戻って来るから、どいて!」

「なんだい、戻って来るのかい」

半分寝ながら答える。

「ベッドあけてよ。恭平寝れないでしょ」

「暖めておいてあげたんだろ」


何言ってんのよ、ぐっすり寝てたくせに。


あたしは、さっきまでの疲労感が消えて、母さんを起こしにかかった。

やっとのことで、母さんはベッドからソファーに移った。

そして、まもなくして恭平が部屋に運び込まれた。

見る限り、恭平は重病人だった。

酸素マスクや、点滴など出産とは縁がないような物を付けて、部屋に戻って来た。

そして、恭平は眠っていた。

「何かあったら、ナースコール押してね。若月先生も後で来るからね」

看護士さんが優しく言って、部屋を出て行った。


恭平……。


お疲れ様。


「おーお。色男が台無しだねぇ」

母さんが、あたしの隣に並んで恭平を見つめる。

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