君とみた未来
「起きたんだ」

「あんな何人も部屋に入って来られたら、眠れるわけないだろ?」


でも寝てたじゃない。


コンコン。

「おまたせしました」
 若月先生が、部屋に入って来た。

「若月先生っ、赤ちゃんは?恭平はどうしてこんなカッコなの?」

「相当心配してたみたいだな、この様子じゃ。大丈夫、赤ちゃんは無事に取り出したよ。午前零時二分。父子共に元気だよ、ただ、及川さんは相当精神力と体力を使ったからね、ちょっと点滴打って休んでもらってるだけだよ」

「ホントね?」

「あぁ、赤ちゃん、見に行くかい?」

「いいの?」

「もちろん」

「母さん、行こうよ」

あたしと母さんは、先生に連れられて、あたし達の赤ちゃんを見に新生児室へ行った。

部屋には入れなかったから、新生児室の廊下の窓から覗くことになった。

新生児室にはたくさんの赤ちゃんがいた。

「どの子か分かるかい?」

若月先生は、部屋の電気を少しだけ明るくしてくれた。

あたしは、遠くの方から、恭平に似た赤ちゃんを探した。

「……わかんない」

「目の前の子だよ、樹理ちゃん」

若月先生は、ホントに目の前の赤ちゃんを指差して言った。


この子……。


「……共同ベッドなの?もぅ一人いるよ。他の子と間違えたりしないの?」

あたしは若月先生に聞いた。

「樹理ちゃん……双子なんだよ」


え?


「双子?」

「そう。言ってなかったけどね」


知らなかった……。


騙された気分だ。

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