君とみた未来
「おかえり」

母さんが起きていた。

「赤ちゃん見てきたのかい?」

「うん。抱かせてもらったの」

「首が据わってないからグニャグニャしてただろ」

「うん」

「俺ちょっと横になってる」

恭平がベッドに入りながら言った。

「あ、はい。大丈夫?」

「さっき手術終わったばっかで出掛けたから、疲れたんだよ、今日は一日寝てなさい」

「赤ちゃんの名前、考えなきゃ」

「そーだ、名前のこと忘れてた!」

寝ようとした恭平が、あたしの言葉でまた起きだした。

「男の子と女の子の名前だろ。名前の本も買えばよかったな」

「あのさ樹理、母さんに名前つけさせてくれないかい」

母さんがモジモジしながら言う。

「何?もう考えてあるの?」

「漢字はまだ考えてないけど、男の子はダイリ。女の子はヒナ」


どっかで、聞いた名前だなぁ。


「俺、女の子の名前気に入った」

恭平が同意する。

「何か由来でもあるの?突然ダイリとヒナなんて」

「由来って言うか、さっき夢にね、出てきたんだよ、あんた達が。その時に赤ん坊をダイリ、ヒナって呼んだのさ」


あれ?


夢っていえば、あたしも見たな前に。


なんだっけ。


「ほら、樹理もずっと前に起きてきた時に、ヒナとダイリは?って聞いたことがあったろ」


そーだ。


思い出した、あの時の夢だ。


恭平が、母さんが名付けてくれたんだろって言ってた。


まさか、あの夢、正夢?


「どうしたんだ?考え込んで」

恭平が聞いてきた。

「あのね、今だから話せる話しなんだけど、夢見たの、去年の十二月。大草原の中に恭平がいて、母さんがいて、あたしがいて。でね、母さんが赤ちゃん連れてきて、その赤ちゃんも双子で、あたしが恭平にどこの子?って聞いたら、恭平が俺達の子に決まってるだろって。名前は?って聞いたら、女の子がヒナ、男の子がダイリだって。母さんが名付けてくれたんだろって、そこで夢が終わっちゃって、母さんにヒナとダイリは?って聞いたんだよね。そしたら母さんお雛様の夢でもみたのかい?って」

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