上海ふたりぐらし

　新生活の始まりと共に私たちは、大小様々な困難とハプニングに遭遇することになる。
　まず最初は、息子の入園問題だった。中国では、９月が入園・入学の季節だ。８月２９日に大学と幼稚園の手続きに行った。私は、９月に入ってから、ほかの留学生と一緒に手続きするのでひとまず問題なし。息子の方も問題なし、のはずだった。が、２日後徐小姐から連絡があり、幼稚園側が息子は入園できない、と言ってきた。理由を聞いても、はっきりせず、ただダメ、の一点張りらしい。
　何でそうなるの？私がそこの大学の留学生ならＯＫのはずじゃ？あんなに歓迎してくれていたのに、たった２日でこの態度の変わりようは何？
　友人の徐小姐は中国人、中国では何を重視するのか知っている。権力だ。普通の先生と話としてもらちが明かない、と思った彼女は園長に直訴した。すると、すぐ入園ＯＫの返事が返ってきたそうだ。じゃ、さっきの話は一体どこから湧いて出てきたのだろう。まあいい。いずれにせよ、息子は翌日から入園できることになった。
　念には念を、と彼女は園長の気が変わらないうちに、入園許可書を作ってもらい、私に渡してくれた。これでやっと一安心。
　９月１日、病院で身体検査を受けた後、息子はめでたく入園できた。中国語が一言もわからない彼は、一体どんなふうに一日を過ごしたんだろう。夕方、お迎えに行くと、
「すごく　たのしかった」
と、満足そうだった。一週目が終わる頃、お迎えに行くと先生が私にこう言った。
「お宅の息子さんは、クラスでいちばんやんちゃです。私が話をしている時、おともだちの肩をたたいて邪魔をします。他の子に影響を与えますので、おうちでも注意してください。」
　帰って息子に聞いてみると、クラスにはやんちゃ７人組がいて、自分はその中のリーダーだと言う。心配していた園生活だが、思いがけず早く馴染んだ息子。しかし早くも先生に目をつけられてしまった。果たしてこれは母として喜ぶべきなのだろうか？