上海ふたりぐらし
 二週目を迎えた息子の幼稚園生活。彼に試練のときがやって来た。幼稚園に着いて、自転車から降ろした途端、泣き出した。彼曰く、
「ようちえんにいる じかん ながい。おかあさんと あそぶ じかんが ない。」
 確かに彼の言うとおりだった。日本だと朝9時に行って、午後2時過ぎにはもうお迎えだ。でも中国の場合、朝8時から夕方4時までと、確かに長い。行き始めの頃は、おもちゃもあるし、お友達もいるから、行くだけで楽しかった。
 しかし、やんちゃ組のリーダーとはいえ、やはり言葉の壁がある。それに幼稚園とはいえ、先生は日本と違ってとっても厳しい。息子は私に甘えたかったのだ。当然の反応だった。だけど、勉強するために来たからには、私は授業を休むわけにはいかなかった。
 結局、大泣きする息子をほかのクラスの先生が、教室まで連れて行ってくれた。夕方迎えに行くと、息子は楽しそうに遊んでいた。担任の先生によると、教室に入るとすぐ泣き止んだそうだ。この日からしばらく、帰りに棒つきキャンディを買わされるはめになった。ちゃんと幼稚園に行けたごほうびだ。一日5角(約7円)で機嫌よく通ってくれるなら、こんなにお得な買い物はなかった。
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