上海ふたりぐらし
 だいたい決まったパターンが多い。お金持ちと貧乏人の恋。出生の秘密。はっ、兄妹かも?突然の事故か不治の病。悲しい結末。そして、バックミュージックはせつないメロディ。これだけ揃えばもう十分。ロマンティック大好きな私は、すっかり韓国ドラマのとりこになってしまった。
 韓国ドラマ、と言ってもここは中国。もちろん彼らは中国語を話している。おまけに中国のTVは基本的に字幕がついているので、勉強にはもってこいなのだ。辞書を片手に、毎回泣きながら観た。
 あと、もうひとつ増えた楽しみは、お酒。強くはないけれど、飲むのは昔から好きだった。しかし、結婚後は機会がなくほとんど飲んでいなかった。勉強のし過ぎか、夜なかなか眠れなかったので、飲み始めたのだが、結果は逆効果でますます眠れなくなった。しかし、飲むこともやめられなかった。
 息子が寝たあと、一人の自由な時間が嬉しくてたまらなかった。彼が寝ると、いつも何をしようかと考えた。もちろん、勉強もした。息子を8時に寝かせ、韓国ドラマを観るためにまず宿題をし、軽くおやつをつまみ、10時になると辞書とメモ・ペンを用意。時にはお酒も。そしていよいよドラマが始まると、私はますます忙しくなる。
「私、今、韓国ドラマみてるの。とってもせつなくて・・・」
 と私の家庭教師でもある友人Aにショートメールを送り、あとはコマーシャルになるたびに返信。私が辞書をひくのをわかっているので、Aもわざと少し難しい内容のものを送ってきた。私はこの時間を利用して、効率よく勉強できたと思う。
 中国語メールに韓国ドラマ、勉強にお酒。「私、今やりたいこと全部いっぺんにやってる」結構疲れるけど、とても充実感があった。学校の勉強とは別に、中国全国統一のテスト、HSK(漢語水平考試)の勉強もしていたので、実際かなりハードだった。おまけに子連れ、自費留学だし。駐在員の奥さんとは違い、うちにはお手伝いさんもいないし、家事も子供の勉強も、全て自分一人でやらなければならなかった。
 自分ひとりで息子を守るんだ、というプレッシャー。子連れ自費留学。結果を出さないと帰れない、という思い。応援してくれた友達。反対せず送り出してくれた両親。いろんな思いがあった。
「とにかく頑張らなくちゃ」

 そして、睡眠時間が減っていった。





 



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