お大事にしてください
「ところで・・・あなたは・・・なぜ・・・ここに・・・?」
逆に老人から質問され、理緒は答えに困った。水元の代わりと言うからには、どんなに怪しくても先生なのだ。まさか、さぼっていたとは言えない。
「え・・・えっと・・・。」
老人の口調がうつったようだ。
(ううん・・・なんて言えばいいかな・・・?)
「どうしたんですか?」
老人にしては、珍しく流暢に話しかけてきた。それは理緒にとって、かなりのプレッシャーに感じられた。
伏し目がちになり、それから大きく深呼吸をした。
「あの・・・実は・・・かゆみ止めがないかなって思って。」
両腕には、内出血の跡が相変わらず残っている。これなら、リアルな回答だろう。理緒は我ながらいい答えだ。そう思った。
「か、かゆみ止め・・・ですか・・・。」
少し考えたあと、薄汚れた白衣のポケットから、何か白い小さな箱を取り出した。
「こ、これを・・・。」
「これってかゆみ止めですか?」
老人は頷いた。そして、こう言った。
「塗って・・・ぬ、塗って・・・下さい・・・。」
「塗るって、今ここでですか?」
また、頷いた。
理緒は困っていた。かゆいのは確かにそうだが、薄汚いポケットから出て来た薬を、とても使う気にはなれなかった。受け取るだけ受け取って、あとで棄ててしまおう、そう思っていた。まさか、ここで塗れと言われるとは、考えもしなかった。
(どうしよう・・・。)
理緒はもう一度聞いた。
「あの・・・ここで塗るんですか?」
老人は頷くだけだ。
それは理緒にとって、とても嫌な態度だ。言葉で何か言われたなら、反論する事も出来る。しかし、この無言の意志表示の前では、理緒に抗う術は無いように思えた。
しかたなく、薬を受け取り、恐る恐る塗った。
藻のような濃い緑色のジェルは、理緒の白い肌とその色が混じり、綺麗な緑色に変わった。
同時に、理緒は驚いた。
(かゆくない・・・。)
夜中ほどではないが、ついさっきまでかゆみがあった。それが全くない。
(ど、どうして・・・?全然、かゆくないよ・・・。)
心が、表情にも表れた。晴れやかな表情だ。
「き、効きま・・・した?」
「はい、すごいです。これ。ありがとうございました。」
そう言うと、理緒は保健室を飛び出していった。
逆に老人から質問され、理緒は答えに困った。水元の代わりと言うからには、どんなに怪しくても先生なのだ。まさか、さぼっていたとは言えない。
「え・・・えっと・・・。」
老人の口調がうつったようだ。
(ううん・・・なんて言えばいいかな・・・?)
「どうしたんですか?」
老人にしては、珍しく流暢に話しかけてきた。それは理緒にとって、かなりのプレッシャーに感じられた。
伏し目がちになり、それから大きく深呼吸をした。
「あの・・・実は・・・かゆみ止めがないかなって思って。」
両腕には、内出血の跡が相変わらず残っている。これなら、リアルな回答だろう。理緒は我ながらいい答えだ。そう思った。
「か、かゆみ止め・・・ですか・・・。」
少し考えたあと、薄汚れた白衣のポケットから、何か白い小さな箱を取り出した。
「こ、これを・・・。」
「これってかゆみ止めですか?」
老人は頷いた。そして、こう言った。
「塗って・・・ぬ、塗って・・・下さい・・・。」
「塗るって、今ここでですか?」
また、頷いた。
理緒は困っていた。かゆいのは確かにそうだが、薄汚いポケットから出て来た薬を、とても使う気にはなれなかった。受け取るだけ受け取って、あとで棄ててしまおう、そう思っていた。まさか、ここで塗れと言われるとは、考えもしなかった。
(どうしよう・・・。)
理緒はもう一度聞いた。
「あの・・・ここで塗るんですか?」
老人は頷くだけだ。
それは理緒にとって、とても嫌な態度だ。言葉で何か言われたなら、反論する事も出来る。しかし、この無言の意志表示の前では、理緒に抗う術は無いように思えた。
しかたなく、薬を受け取り、恐る恐る塗った。
藻のような濃い緑色のジェルは、理緒の白い肌とその色が混じり、綺麗な緑色に変わった。
同時に、理緒は驚いた。
(かゆくない・・・。)
夜中ほどではないが、ついさっきまでかゆみがあった。それが全くない。
(ど、どうして・・・?全然、かゆくないよ・・・。)
心が、表情にも表れた。晴れやかな表情だ。
「き、効きま・・・した?」
「はい、すごいです。これ。ありがとうございました。」
そう言うと、理緒は保健室を飛び出していった。