お大事にしてください
「理緒、理緒。」
ここ数日、一緒にゴミを片づけていたおかげなのか、母親は少しだけ昔の母親に戻る時があった。そんな時は、今日みたいに起こしに来てくれる。
でも、今の姿を見せるわけにいかない。理緒は怯え、慌てた。
(お母さん、来ないで。)
声に出そうとした。けれど、分厚くなった唇と腫れただれた喉のせいで、うまく声を出す事が出来ない。
(お母さん、来ないで。)
願う事しか出来なかった。
しかし、無情にも理緒の部屋の扉が開いてしまった。
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