お大事にしてください
「まったく、おばあちゃんったら。」
幸は怒りが収まらない。母親はうれしそうな顔をしていた。
「ありがとうね、幸。」
「ん?何が?」
「ほら、今言ってくれたじゃない。お義母さんに。」
恥ずかしいのだろう。具体的な事を言うのは避けているようだった。
「おばあちゃんに・・・?あぁ、さっきの事か。いいよ、別におばあちゃんが悪いんだから。」
「でもね、うれしかったのよ。お母さんはあんな風には言えないから。お父さんが生きている時には、あそこまでひどくはなかったんだけどね。やっぱり、あかの他人が一緒に住んでいるのが鼻につくんだろうね。」
「そっか。それは私にはわからないけど、お母さんが言うからそうなんだろうね。」
幸の父親は、幸が物心つく前にいなくなっていた。だから、写真でしか顔を知らない。写真を見ても父親だと言う実感はない。少しまゆ毛が似ているかもしれない、そんな風に思うのが精一杯だった。
振り向くと、仏壇の上に飾られた父親の写真があった。母さんを助けてくれてありがとう、そう言っているような気がした。
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