お大事にしてください
美鈴は驚いた。今までも普通に、六郎に対してwを使っていた。美鈴からすれば、何を今更と言ったところだ。それでも美鈴はやさしかった。
(wは、笑いと言う意味ですよ。)
(そうか、ありがとう。)
他の社員だったら、まずこんな回答は返ってこない。六郎のイメージがそうさせているのだろう。きっと驚きの返事が来るはずだ。そうではなく、やさしく諭してくれるような答えに、六郎の美鈴に対する評価はますます上がった。
(どういたしまして。ところで、お話を戻していいですか?)
(そうだった。すまなかったね。なんだい?)
(なんとなく元気なさそうですけど、大丈夫ですか?お薬お持ちしましょうか?)
また、心臓が痛くなった。いくら恥ずかしいものなど何もないと思ってみても、今抱えている悩みは打ち明けられない。差し障りのない程度に嘘をついた。
(いや、最近気分がすぐれなくてね。たぶん、ここの所の陽気の変化に、体がついていけないんじゃないかな。)
(そうですか。お大事にして下さいね。)
(ありがとう。)
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