お大事にしてください
目覚める6
「はぁ・・・。」
会社帰り、本当に大きなため息をついた。その姿に何人かが、六郎の事を振り返って見たくらいだ。家に向かう足取りも重い。気がつけば、今まで降りた事もなかった駅で、なぜか降りていた。
知らない道なのに、何度も来た事があるかのように、六郎は何かに向かって歩いていた。はじめゆっくりだった足取りが、いつの間にか早足になっている。何かを、何かを目指して歩いていた。
気持ちは若く、格好は洒落ていても、六郎はそれなりの年齢だ。早足は長く続く事はなかった。軽い息切れをし、その場に立ち止まった。そこは細い、薄暗い路地だ。そこに来てはじめて、六郎は辺りを確認した。
「こ、ここは・・・?」
目の前のネオン管は、点いたり、消えたりと、まるで六郎の鼓動のように慌ただしい。どの店も六郎とは縁のないような、薄汚い店ばかりだ。そんな通りに不釣り合いな文字を見つけた。
薬。
なぜか自然とその店に足が向いた。
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