お大事にしてください
他の部員達も、思い切り楽しんでいた。が、それは長くは続かなかった。
「お前達、何しているんだ?」
水泳部の三浦だ。今日は水泳部の練習はないはずだ。それなのに、何故ここに主将の三浦がいるのか、誰もわからなかった。
「何してるって、泳いでいるんだけど・・・。今日、水泳部の練習はないはずだよね?三浦こそ何しているの?」
部長の湯月が答えた。湯月は、三浦と同じクラスだった。そのおかげで、今日、水泳部の練習がない事も把握していたのだ。
このプールに、誰もスクール水着でいる部員はいない。着ている水着は、それぞれの私物だ。その中でも、特に湯月の水着はきわどかった。黒のビキニが、白い肌と眩しいほどのコントラストを形成している。
はじめ、三浦は湯月の存在に気がついていなかったらしい。何人かいるワンピースの水着を着た生徒に、気がついただけだった。それなら、いつも見慣れているから、何の抵抗もなかった。しかし、湯月の着ているような水着には、いっさい免疫がない。どこを見ていいかもわからず、頬を赤らめながら返事をした。
「お、俺か・・・。俺は自主練に来たんだよ。もうすぐ大会もあるしな。それより、湯月、お前バスケ部だろ。なんだ、その格好は?」
その時、三浦が湯月の胸元に視線を向けた事を、幸は見逃さなかった。
「そうか、そいつは知らなかった。じゃ、これからプールは自由に使ってくれ。私達は消えるから。それとも、私達がここにいた方が自主練に気合いが入るかぁ?」
湯月も三浦の視線を、はっきりと感じ取っていた。だから、わざと三浦を冷やかした。
「ば、ばか。ひ、ひとりの方が練習に、身が入るに決まっているだろ。別に、お前なんかに興味はないから、とっとと消えてくれよ。」
「わかった。わかった。じゃ、みんな、こいつが練習するみたいだから、着替えて体育館に戻って。」
幸も、尚美も、他の部員達も、一斉にプールが出た。
「せっかく気持ち良かったのにね。」
「はぁ、体育館に戻りたくないよ。」
皆、不満を漏らしながら、三浦の横を通り過ぎた。
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