お大事にしてください
目覚める【完】
あれだけビールを飲んだにも関わらず、頭の中では男達の言葉がはっきりとぐるぐると回っていた。
(寝小便・・・。オムツ・・・。寝小便・・・。オムツ・・・。)
心配でしょうがなかった。忘れるために飲んだビールが、逆に今の六郎を追い込んでいた。
(どうする。大丈夫なのか?まさか、もしかして、今晩、寝小便するなんて事はないのか?)
自分の体が信じられない。自分も、もしかしたら緩くなっているのかも知れない。緩くなっているからこそ、夜中にトイレに目覚める事がなく漏らしてしまうかもしれない。自分が信じられない時、何を信じればいいのだろう。薬だ。六郎が信じられるものは、あの薬しかなかった。
(昼間の会議で大丈夫だったから、きっと大丈夫だ。)
言い聞かせ、まず一錠飲んだ。
(でも待てよ。昼間はお茶しか飲まなかった。今はどうだ。ビールを浴びるほど飲んだ。何杯飲んだかなんて覚えていない。)
不安から、さらに三錠ほど追加して飲んだ。
この時、完全に押し潰されていた。食後一錠と言うきまり。寝小便をしてしまうかも知れない、不安の方が断然大きかったのだ。
何か不安を見つけては追加、何か不安を見つけては追加。いつしかパッケージにあった薬は全てなくなった。
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