狐面の主人
「…えッ…炎尾様ぁッ!!」
どんどん遠ざかって行く炎尾の後ろ姿を見つめながら、思わず五穂は叫んだ。
しかしもう炎尾は止まらない。
「貴様との因縁…。
呪縛を断ち切るためにも…。
五穂を護るためにも…。
この命に代えても……
貴様を滅するッ!!!」
「駄目…ッ!
駄目ですッ!炎尾様ぁッ!!」
《貴様など…返り討ちにしてくれるわッ!!
消えて…消えて無くなるが良いッ!!!》
ひたすらに突っ込んでくる炎尾の前に、妖狐の影の尾が立ち塞がった。
強烈な邪気に当たり、炎尾の美しい毛並に、生々しい鮮血が広がる。
「…ッぐ!!」
けれど炎尾の足は、何かに取り憑かれたように走り続け、真っ直ぐ妖狐に向かって来る。
次第に、妖狐に恐怖の色が見えてきた。
《何故…何故倒れぬ!!
死ね…死ね…死ねッ!!
死ぬが良いッ!!!》
「最早…痛み苦しむ暇も無し。貴様を殺せば…何もかもが終わる…。」
一層、炎尾の身体が、その光を増した。
「嫌…嫌です…ッ!
行かないで…行か…ッ!!」
カカッ
辺り一面、光の波に包まれた。