狐面の主人
2
「……………ぅ…。」
あまりの眩さに、反射的に目を瞑っていた五穂が、静けさを感じ、ゆっくりと目を開けた。
そこには、
「……………え?」
先程まであった筈の、広い立派な座敷ではなく、古び廃れた、巨大な神宮があった。
五穂はすぐに、此処が屋敷の真の姿だということに気付いた。
炎尾の…もしくは妖狐の妖術によって、立派な美しい屋敷に見えていただけなのだ、ということに。
「…………炎尾様…?」
見渡した五穂の目に、真っ先に飛び込んできたのは、
「ッッ!!?」
一面の、狐の死骸だった。
屋敷で働いていた、あの沢山の雄狐の手伝い達。
狐の仮面の代わりに、皆本当の姿となっていた。
…だが、二度と、その目を開くことは無い…。
何故、自分は何とも無いのだろうか。