狐面の主人
紐の押さえも無くなり、残るは面を外すのみとなった。
五穂を見る、面妖な狐の顔に手を添え、力を込める。
だが…
「……五穂……?」
「………………。」
五穂は、一向にその手を引こうとしない。
炎尾の頼みだというのに、その面を外そうとしないのだ。
「……五穂……どうした…?」
五穂は黙る。
唇が微かに動いているが、声は聞き取れない。
「…五穂………。」
炎尾は一瞬迷ったが、ゆっくりと、五穂の手をほどいた。
「え…………?」
紐を結び直し、再びその顔を押さえつけてしまった。