狐面の主人




「…俺は……死なねばならないのだ……。」





「…え……?」



何を、言っている?

何故、炎尾が死ななければいけない?


「…ご冗談を…。」


五穂は、嘘だとでも言うように首を振る。
けれど、炎尾のその、纏った悲しげな雰囲気が、嘘でないことを物語っていた。


五穂はついに抑えられなくなり



「…嘘ですっ!
ご冗談を仰らないで下さい!!

何故…炎尾様が…そんな…。」


炎尾の胸を叩いた。

やるせない。認めない。
きっとまた、からかっているに決まっている。

だって、この人が死ななければならない理由が分からない。

死ぬわけがない。

死んでほしくない。


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