狐面の主人


炎尾の腕が、消えかかっているのだ。




黒い霧となって、風に乗って、腕が無に飲まれていく。


「ッ…どうして…ッ!?」


五穂は、言い様の無い恐怖を覚え、炎尾の腕にしがみついた。

消えてしまわないように。


「いやッ…!いや、いやッ!
やめッ…やめて下さいッ!!」


しかし、いくら願おうとも、炎尾に迫る危機は止まらない。

左腕の大部分が消えると、次は腹、次は足が消え始める。


炎尾は、何も言わない。
自分の運命を受け入れてしまったように。


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