狐面の主人
「五穂、あんたやるじゃないのさ。
長者に買われるなんて、運が良いよ!
替われるもんなら替わりたいねぇ。」
女郎の一人が、五穂に話しかけた。
しかし五穂は、
「お願い…。姐さん、替わって下さい…。
売られるなんて、嫌です…。
捨てられるのは、もうたくさんです……。」
そう泣き付かれ、女郎は言葉を失う。
そして必ず、気味悪がって離れていくのだ。
見捨てられた五穂はうなだれ、檻の端で、泣きはらすのだった。