狐面の主人


すると雨珠は、納得したようにポンと手を叩いた。



【なぁんだ、まだそんな新鮮な反応する奴がいたとはなぁ。

お前、良い根性してるな、女!】


この鼠は自分を名前で呼ぶ気は無いのだろうか。

と思ったが、またあえて、黙っておく。




【なぁなぁ、お前、綺麗な着物着てんなっ!
下働きなんて、嘘じゃねぇのか?】


五穂の表情が曇る。

着物の裾を引っ張っていた雨珠は、様子が可笑しいことに気付き、五穂の顔を覗き込んだ。



【…女?】


「私…女郎屋に売られたんです……。」



そして五穂は、雨珠に今までの経緯(いきさつ)を全て話した。


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