狐面の主人
「そんなに堅くなるな。
立って、よく見せてくれ。」
五穂は少々戸惑ったが、ゆっくりと立ち上がった。
白い肌と、黒い髪に、桃色の着物がよく映えている。
良い物を着れば、この上無い程に美しい五穂。
今まで古着や、女郎着などを着せられていたと思うと、心が痛んだ。
「五穂は、美人だな。
俺には勿体無い位だ。」
その言葉を聞いて、五穂は目を見開いた。
「なっ、何を仰られますっ!
そんな御言葉…五穂のような者にこそ、勿体のうございます…////」
今まで掛けられたことの無い言葉。
恥ずかしくなり、五穂は顔をすっかり両手で隠してしまった。