狐面の主人
「御客様は、まだお着きにはならないのですか…?」
照れ臭さを隠そうと、話題を変えようとする。
「もう来る頃だ。
五穂にも、礼服を用意させる。
早く着替えて来い。」
「え…?」
五穂はしばらく、その意味が分からなかったが、
「Σ!!!」
急に土下座をした。
「わ、わ、私のような下働きが皆様と同席するなど…っ!
無礼極まりませぬっ!!」
しかし炎尾は涼しげに言う。
「ほぅ、俺の言う事が訊けないとは…。
五穂は、そう易々と主への恩義を忘れるような奴だったのか?」
「そっそのような事は…!!」
五穂はぐぅっと口をつぐみ、渋々礼服を受け取った。