狐面の主人
こうして今、二人は夫婦の契りを交わしたことになる。
けれどまだ、試練は続いていたのだった。
《下らぬ茶番は飽々よ…。
さぁ、炎尾…。
貴様の愛したこの女に…
己の醜き様を、とくと見せてやるが良い。》
炎尾は躊躇した。
彼には確信があったからだ。
自分の能面を取り、真実の姿を晒したとき、五穂は必ず、自分を拒む…。
「…暫し、猶予を頂きたい…。
最期に…この者に言わねばならぬ事が…。」
《……ふん、良かろう…。》
炎尾は五穂を見つめた。