Cool Lip
「さーとぉーうさーん…」


ふにゃっと泣きそうな顔のわたしに、佐藤さんの目が一瞬怯える。


「ど、どうしたの…?珍しいよね、水本さんが図書室にいるの」


明らかに様子のおかしいわたしを前にして、逃げずに対応してくれる彼女は優しい。


佐藤亜由美ちゃんは、普段クラスでは物静かだけれど、三上くんに匹敵するほどの優等生なのだ。


「おねがいー試験範囲教えて…」


正に神様からの贈り物。


優等生の彼女に聞けば、間違いない。


「いい…けど…」


何か言いたそうな彼女の気持ちはよくわかる。


「色々…訳があってね…」


「…そう、なんだ…」


ふっと自嘲気味に呟くわたしに、佐藤さんは引き攣った笑顔を見せた。
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