Cool Lip
猛ダッシュで通りを横切っていくけど、問題の街路樹にたどり着いた時には何かがいたような形跡は見当たらなかった。


「…今の、猫だったのかな…」


なんとなく、うすら寒いものが背中をよぎる。


呪いの黒猫なんて、いないと思ってたけど…


というよりは、佐藤さんは普通の黒猫を見て、単純に怯えていただけだと思ってた。


だから猫を見つけて、なんでもないことを教えてあげれば安心するんじゃないかって。


でも―――









「―――…おい」






…あまりに、


あまりにタイミングよく声をかけられて、


わたしは息が止まりそうになりながら、バッと振り返りざま身構えた。
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